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サンフレッチェ広島、場所取り廃止——LINEミニアプリで入場整理券

目次

場所取り全廃、前日抽選の整理券へ

試合の日の朝、スタジアムの前から行列が消えた。

サンフレッチェ広島は5月3日のホームゲームから、自由席エリアの「場所取り」ルールを完全に廃止した。代わりに導入したのが、LINEの中で動く小さなアプリ「LINEミニアプリ」を使った入場整理券だ。

仕組みはシンプルである。試合前日の午前9時から午後5時までに、スマホのLINEから抽選に申し込む。午後6時に結果が届き、整理番号が割り当てられる。翌日の試合当日、開門30分前に整理番号順で並ぶ——それだけだ。夜明け前からスタジアムに駆けつけ、シートやロープで場所を確保するあの光景は、もう起きない。

この変更で観客が減るどころか、むしろ増えた。収容率は90.3%に達し、動員数は旧スタジアム時代から約59%増えている。「便利にしたら人が来なくなる」という懸念を、数字が打ち消した。

ホーム側AゲートとDゲート合わせて最大4,000名分が対象で、LINE公式アカウントの友だち追加が参加の前提となる。整理券を持っていなくても入場はできるが、その場合は整理券保持者の列が形成された後、最後尾からの案内になる。LINEを使っていない高齢者や訪日外国人も同じ扱いで、追い返されるわけではない。ただし、入場のタイミングと座席の選択肢は限られる。

新スタジアムの「待てない」事情

周辺に待機スペースがない

「なぜ広島が動いたか」は、スタジアムの場所を見ればわかる。

エディオンピースウイング広島は2024年2月に開業した、市街地の中心に立つ都市型スタジアムだ。最寄り駅から徒歩圏内という利便性の裏側に、決定的な制約がある——外周に、数千人が列をなせる空間が物理的に存在しない。

旧スタジアムなら許容できた「夜明け前からの待機行列」は、街中では周辺住民の生活に直接影響する。道路を塞ぎ、滞留が生まれる。「並ばせたくない」より先に、「並ばせられない」という現実があった。デジタル抽選で来場タイミングを分散させ、スタジアム前に人が集まりすぎない状態をつくる——それが設計の前提だった。早朝から並ぶファンの体力的な負担を減らしたいという意図も重なったが、それは制約と目的が一致した結果だ。

LINEが「共通インフラ」になったJリーグ

広島は「たまたま先進的だった」わけではない。

Jリーグでは近年、LINE公式アカウントをファンとの接点として整備するクラブが増え、すでに約7割のクラブがLINEミニアプリを導入している。試合情報の配信やデジタル会員証、ポイント管理——こうした機能を個別に開発せず、日本人の9割近くが使うLINEというプラットフォームにまとめて乗せる動きだ。基盤が共通化されたことで、入場管理のような新しい機能も一からシステムを組まずに追加できる。新スタジアム開業という転換点が、「いつやるか」の答えを決めた。

GPS・全員集合で不正を遮断

デジタル化すると、当然こういう疑問が浮かぶ。「友人に頼んで、自分の分も申し込んでもらえばいいのでは」——その抜け道は、最初から塞がれている。

整理券の申し込みにはGPSによる位置情報の確認が伴い、会場の近くにいない人は申し込めない。遠隔地にいる友人が代わりに申し込む、という行為は仕組みとして封じられている。グループで来場する場合も同様で、代表者がまとめて申し込める機能はあるが、入場時には申し込んだ人数が全員揃っていることが確認される。「1人だけ早く来て、後から仲間を合流させる」という方法は通用しない。

転売と偽造への対策は、整理券の画面そのものに組み込まれている。画面はアニメーションで常に動いており、静止したスクリーンショットでは入場できない。番号だけ写しとって売る、あるいは偽の画面を見せる——そういった手口を、仕組みの側で封じている。

こうした設計はスタジアム固有の話ではない。King GnuやVIVA LA ROCKといった大型ライブやフェスでも、GPS制限・グループエントリー・不正申込防止を備えた入場整理券システム「mogily(モギリー)」が使われている。広島のシステムとは別のサービスだが、「並ぶのが当たり前」だった場所に、同じ発想の仕組みが静かに広がっている。

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