LINEを開くだけで、デジタルな日本円を送れる。そんな仕組みが2026年5月22日から動き始めた。
JPYCがLINEウォレットに正式採用
LINEアプリ内の電子財布「Unifi(ユニファイ)」に、日本円と同じ価値を持つデジタル通貨「JPYC(ジェーピーワイシー)」が正式採用された。
JPYC株式会社と、LINEのWeb3・ブロックチェーン事業を担う子会社LINE NEXTが5月22日に発表し、同日から提供が始まった。
UnifiはLINEアプリ内にすでに存在していた電子財布サービスで、今回はそこにJPYCの取り扱いが新たに加わった形だ。
協業の検討を始めたのは2026年1月。わずか5ヶ月で実装にこぎつけた。
何ができるようになったか
新たにアプリをダウンロードする必要はない。LINEアカウントがあれば、そのままUnifiにアクセスでき、送金・決済・リワード受取の3つが使える。
LINEの国内月間利用者は1億人を超える。その全員が、特別な準備なしにデジタル日本円を受け取れる環境が今日から整った。
法的な裏付け
JPYCは「1コイン=1円」で価値が連動するステーブルコイン——価格が安定したデジタル通貨の一種だ。
JPYC株式会社は2025年8月、国から資金移動業者として正式に登録を受けており、法律の枠の中で動いている。
技術の土台には「Kaia(カイア)チェーン」と呼ばれるブロックチェーンが使われているが、利用者にとってより重要なのは、すでに手元にあるLINEだけで完結するという点だ。
なぜLINEで動くと意味が変わるのか
これまでデジタルな日本円を使おうとすれば、専用のウォレットアプリを別途インストールし、独自の口座を開設し、送金の仕組みを一から理解する必要があった。
ブロックチェーン——取引の記録を多数のコンピュータで分散管理する技術——の知識なしには、入口にすら立てなかった。
LINEへの採用は、その壁を取り払う。
新たなアプリは不要で、操作を覚える手間もない。送金のたびにかかっていた手数料(ガス代と呼ばれる)も、Unifi上では徴収されない。
すでに手元にあるLINEを開けば、そのまま始められる設計だ。
月間1億人超のプラットフォームに日本円ステーブルコインが採用されるのは国内初となる。「詳しい人だけの道具」から「誰でも触れるもの」への転換は、規模の変化でもある。ただし現時点のJPYCの累計発行額は25億円。1億人という器の大きさと、まだ小さい中身——両方の事実がここにある。
リワードと今後の展開
預けると利息がつく仕組み
UnifiでJPYCを受け取ったまま置いておくと、リワードが自動的に積み上がる。銀行口座に預金を入れておくイメージに近く、特別な操作は必要ない。
JPYC社の発表によると、基本年率は4〜5%。キャンペーン期間中は最大年率8%まで上乗せされ、サービス開始と同時に総額8万JPYC規模のキャンペーンも始まったという。
日本の銀行の普通預金金利が0.1%前後にとどまる現状と並べると、その差は40〜50倍になる。
ただし、このリワードはKaiaブロックチェーンのネットワーク運用から生まれる収益が原資だ。銀行預金と違い元本保証はなく、利率も変動する。仕組みが異なる点は理解した上で使うことになる。
利用の現状と日本円への出口
サービス開始時点のJPYCは、口座数が約1.8万件、累計発行額が25億円。総取引高はその14倍超にあたる350億円を超えており、一度手に入れたJPYCが繰り返し使われ続けている実態を示している。
JPYCは1コイン=1円で日本円に戻せる設計だ。
2026年3月、JPYC社はソニー銀行と基本合意書を締結した。銀行口座から直接JPYCを即時購入できる仕組みの検討が動いており、実現すれば円とJPYCの往来がより身近になる。将来的にはLINEミニアプリでQRコード決済や加盟店での支払いにも対応する予定とされているが、日常の買い物でJPYCが使えるかどうかは、どれだけの店が受け入れるかにかかっている。
資本が示すもの
2026年5月のシリーズB(成長段階の資金調達)で、JPYC社の累計調達額は約50億円に達した。
明治安田生命系・地銀系のファンドが参画しており、金融機関が社会インフラとして位置づけていることは資本の動きが示している。
器は整いつつある。中身がそれに追いつくかは、これからの問いだ。

