LINEのアプリの中で動く小さなサービスがある。飲食店の注文受付、会員証、ゲームのアイテム販売——企業がLINE上に構えた「お店」だ。
そこでiPhoneユーザーにデジタルコンテンツを売るとき、事業者は売上から26〜31%を手数料として引かれていた。
その手数料が20%になる。LINEヤフーが2026年5月25日に明らかにした。
iOS版の決済手数料が20%に
LINEミニアプリとは、LINEアプリの中で動く業務用の小さなサービスのことだ。
飲食店の注文受付や会員証として使われることが多いが、ゲーム内のアイテム購入やマンガ・動画配信といったデジタルコンテンツの販売にも活用されている。
iPhoneでこうしたデジタルコンテンツを購入する仕組みを、アプリ内課金(IAP)という。
このIAP経由の売上に対し、事業者はこれまで26〜31%の手数料を負担していた。
それが20%に下がる見込みだ。
手数料が下がる理由
直接のきっかけは、Appleが動いたことだ。
AppleはLINEミニアプリのような「大きなアプリの中で動くミニサービス」向けに、「Mini Apps Partner Program」という優遇制度を新設した。
これにより、これまで事業者の規模に応じて変わっていたApple側の取り分が、一律15%に整理される。LINEヤフー側の手数料(5%)と合わせると20%になる計算だ。
スマートフォンアプリの世界では長年、「iPhoneユーザーへの課金には売上の30%をAppleに払う」が常識とされてきた。
Apple自身がその壁を引き下げる方向に動いたことは、業界の目線で見れば小さくない変化だ。
2026年10月から適用予定
この手数料引き下げは、2026年10月からの適用を予定している。
現時点ではまだ「予定」の段階であり、実際に手数料が変わるのは秋以降だ。
対象はデジタルコンテンツのIAP決済に限られる——飲食店の注文や会員証といった物理サービス中心の事業者には、直接的な影響はほぼない。
手数料の差は毎月の利益に直結する
手数料が下がるとは、同じ売上でもその分だけ手元に残る額が増えるということだ。
改善幅はもとの手数料率によって変わる。大規模事業者(31%→20%)は11ポイント分、小規模事業者(26%→20%)は6ポイント分の改善となる。
月100万円の売上なら月6〜11万円、月1,000万円なら月60〜110万円——その差が毎月積み上がっていく。
固定費や開発費はそのままでも、手数料の差だけで利益の厚みが変わる計算だ。
デジタルコンテンツを扱うエンタメ系事業者にとっては、この手数料削減がそのまま営業利益率の押し上げにつながる可能性がある。
ただし実際の利益改善幅は、各社の原価構造や固定費の割合によって異なる。
すでに動いている会社もある。
ゲーム会社のPlaycoは、LINEミニアプリ上で育成ゲーム「ぶるぶるどーぶつ」を展開し、アイテム課金による収益化に踏み出した。
LINEヤフーが公開した事例資料によれば、同ゲームのLINE公式アカウントの友だち数は640万人を突破している。
先行事例は1本——だが、「実際にやれる」という証明にはなっている。
ミニアプリタブやIAP解放と合わせて読む
手数料が下がっただけでは、商売は成立しない。
どれだけコストが安くなっても、買いに来る人がいなければ売れない。売れるものがなければ意味がない。
今年、その3つが同時に動いた。
2026年3月、LINEアプリの「ウォレット」タブが「ミニアプリ」タブへ刷新された。
LINEを開いたユーザーの目に、ミニアプリが自然と入るようになった。LINEヤフーによれば、この刷新以降、ミニアプリ全体の利用頻度は半年で約20%増加している。
月間利用者数はすでに約2,480万人に達しており、プラットフォームとしての規模は小さくない。
2026年4月には、デジタルコンテンツへの課金機能が全事業者に解放された。
それまでは一部の事業者しか使えなかった仕組みが、誰でも使える状態になった——つまり「売れるものの制限が外れた」。
そこに今回の手数料引き下げが来る。
集客の導線ができ、デジタルコンテンツの課金が解放され、コストが下がる。
この3条件が同時に揃うのは、LINEミニアプリの歴史の中で初めてのことだ。
この流れを後押ししたのが、2025年末に施行された「スマホ新法」だ。
AppleやGoogleに対し、自社の決済以外を不当に制限しないよう求めた法律で、Appleが今回の優遇プログラムを設けた背景にも、この法的な圧力がある。
条件は整った。あとは事業者が踏み出すかどうか、という局面だ。

