LINEでお店や企業からメッセージが届く——その仕組みが「LINE公式アカウント」だ。
飲食店のクーポンや美容室の予約リマインドなど、すでに日常の一部になっている。
ただ、この仕組みを本当に使いこなすには、これまで「外部の専用ツール」が必要だった。
「CRMオプション」で何が変わるのか
現在のLINE公式アカウントの標準機能は「全員に同じメッセージを送る」一斉配信が基本だ。
「先月Aを買った人にだけBをすすめる」といった使い方をするには、外部の専門ツールに月額数万円を支払うしかなかった。
LINEヤフーは2026年5月の公式発表の中で、この課題を解消する新オプション機能「CRMオプション」を発表した。
購買データで「自動配信」
2026年夏にリリース予定の「CRMオプション」は、この壁を取り除く。
自社が持つ購入履歴や来店データをLINEに連携させ、「誰に・何を・いつ送るか」を外部ツールなしで設定できるようになる。「誕生日の3日前にクーポンを送る」「購入から1週間後にフォローのメッセージを送る」といった配信が、専用ツールなしで組める。
対象プランや詳細な利用条件、月額料金については現時点で非公開とされており、リリースに合わせて案内される見通しだ。
「追加の外部ツール契約が不要になる」という方向性は示されているが、CRMオプション自体にどの程度のコストがかかるかは、導入判断の前に確認が必要になる。
こうした「顧客データを使った絞り込み配信」がどれほど効果を持つか、先行する事例がある。
化粧品メーカーのクラシエは、外部のCRMツール(顧客管理システム)を使い、ユーザーの髪の状態や悩みに合わせたパーソナライズ配信をすでに実現している。
LINEの公式資料によると、メッセージの反応率は最大10%以上を記録したとされる(配信前との比較)。
その「外部ツールありき」でしか実現できなかった仕組みが、LINE標準機能の中で使えるようになる。
フォームで情報収集も完結
自動配信を活かすには、まず顧客データを集める仕組みが必要だ。CRMオプションと同時に、LINE内でアンケートや問い合わせフォームを作成できる機能も加わる予定だ。
たとえば、来店したお客さんに「今日はご満足いただけましたか?」と感想を聞いたり、次回予約の希望日を収集したりといった情報収集が、LINEの画面から外に出ることなく完結する。
これまで別のWebサービスのURLを案内していたやり取りが、LINEの会話の中だけで済むようになる。
業種別の専用パッケージも用意される。
飲食向けの「LINEレストランプラス」(2026年6月開始)はPOSレジやモバイルオーダーと連動し、美容向けの「LINEビューティープラス」(夏リリース予定)は予約・カルテとの連携を想定している。
顧客データの収集から自動配信までを、業種ごとにまとめて提供する設計だ。
月間アクティブ127万アカウントを超えるプラットフォームに、こうした機能が標準で載ることになる。
10月の料金改定も見逃せない
便利な新機能が来る一方で、同じタイミングで料金体系も変わる。
2026年10月1日から、LINE公式アカウントの追加メッセージ料金(月の上限を超えた分の課金)の仕組みが変わる。
現行は送る量が増えるほど1通あたりの単価が安くなる仕組みで、5段階の料金が設定されている。
これが廃止され、新料金は「月20万通まで1通3円、超えた分は1通2.5円」というシンプルな2段階制に一本化される。
一見わかりやすくなるが、これは大量配信をしていた企業にとって実質的な値上げを意味する。
LINEヤフーが公表した新旧料金の比較によれば、大量送信のケースで最大約1.91倍のコスト増になる。
たとえば月に数十万通を送り続けているお店や企業は、10月以降に同じ配信量を維持すると、メッセージのコストだけで大きな差が出る。
CRMオプションで「必要な人だけに送る」運用に切り替えれば、配信通数そのものを減らすことができる。
コスト対策の観点でも、新機能の活用を検討する理由になる。
当面の現実的な対応は、自社の月間配信量を把握したうえで、10月以降のコスト試算をしておくことだ。
CRMオプションの詳細や料金はリリース時に案内される見通しで、その情報が出た段階で導入を検討するかどうかを判断できる。

