スマホを小さなシールにかざす。それだけで、注文画面やポイントカードがLINE上にパッと開く。
QRコードのようにカメラを起動して読み取る必要はない。かざすだけで完了する。LINEヤフーが提供する「LINEタッチ」だ。
2025年11月のサービス開始から半年。2026年5月12日、LINEヤフーはプレスリリースで、この累計タッチ回数が100万回を突破したと発表した。
導入した店舗や企業のアカウント数はすでに2,000を超えている。
2,000アカウントで100万回——単純に割ると、1アカウントあたり平均約500回のタッチになる。
半年で500回というのは、月に80回以上、つまりほぼ毎日複数回使われている計算だ。
2,000アカウントの顔ぶれを業種別で見ると、飲食店・レストランが約5割を占める。
他の業種を大きく引き離す数字だ。
理由は使い方の多さにある。
飲食店では、客が店にいる間のあらゆる場面に「かざす」が入り込む。
入店時のチェックイン、テーブルからのモバイルオーダー(スマホで注文する仕組み)、会計時のポイント付与——。
1回の来店で複数回タッチされる構造が、この数字を引き上げている。
シールは1枚300円から、スタンド型は2,000円。どちらも買い切りで、月々の費用はかからない。
「大がかりな設備投資なしに始められる」という点も、飲食店が動いた背景にある。
誘導先の9割が「注文」や「ポイント」
100万回のタッチは、いったい何に使われたのか。
同プレスリリースで公開された内訳を見ると、この仕組みの「本当の使われ方」が浮かび上がる。
トップはLINEミニアプリへの誘導で、全体の約6割。
LINEミニアプリとは、LINEアプリの中で使えるモバイルオーダーやデジタル会員証の画面だ。専用アプリを別途インストールしなくても、LINE上で同じ機能を使える。
客がその場で何かを「する」ための画面に直結しているのが特徴だ。
次いでショップカード(ポイント付与)が約3割。
合わせると、100万回のうち9割は「注文」か「ポイント」への誘導だった。
この内訳からわかるのは、使われ方の偏りだ。
「友だち追加」や「お知らせを見る」といった、店からの情報発信を目的とした使い方はほとんど見当たらない。
このタグは集客の入口ではなく、すでにLINEでつながっている客に「次の行動を取らせる」道具として使われている。
管理画面から誘導先はいつでも切り替えられる。
ランチ時間は注文アプリに、閉店後は友だち追加に——といった使い分けも、追加費用なしでできる。
別途アプリを開発せずとも、普段使いのLINE上で客の行動を引き出せる——そこに、この小さなタグの実用性がある。
アルペン400店舗、吉本は劇場で活用
飲食店が半数を占める一方、残りの半数では何が起きているのか。
同発表によれば、小売・スポーツ用品・エンタメ・医療など複数の業種に広がっているが、飲食店ほど突出した業種はなく、用途もさまざまだという。
業種の異なる2社の事例を見ると、「どこに置くか」という設計の考え方が浮かび上がる。
レジ前で会員証へ直行
スポーツ用品チェーンのアルペンは、スポーツデポ・アルペン・ゴルフ5など全国約400店舗のレジ前にタグを設置した。
会員証が必要になるのは、ちょうどレジに立ったときだ。
アプリを探して開いて画面を探す——という手順が、スマホをかざすだけに変わる。
「必要になる瞬間」にかざせる場所に置いたから、客は自然に使う。
座席から投票に参加
吉本興業は、お笑い公演を行う各劇場に導入した。
館内各所に端末を設置し、公演中の投票サービスへの入口として使っている。
大勢が集まる劇場でQRコードを読み取らせるのは手間がかかる。
かざすだけなら、その場で数秒で完了する。
参加のハードルが下がるほど、投票数は増える——という発想だ。
アルペンはレジ前、吉本は座席周辺。
300円のシールが何をするかは、どこに貼るかで決まる。

