LINEヤフーが新しいAIを動かし始めた。
名前は「Agent i(エージェント・アイ)」。
LINEに話しかけるだけで、AIが代わりに予約や注文を完結させる——そういう仕組みが、この夏から企業向けに本格展開される。
「Agent i」で何が変わるのか
Agent iは、2026年4月20日にLINEヤフーが発表したAIだ。
これまで別々だったYahoo! JAPANとLINEのAI機能をひとつに統合し、6月5日の大規模アップデートで商用化が本格始動した。
LINEには「LINEミニアプリ」と呼ばれる仕組みがある。
飲食店の予約からポイントカードまで、さまざまなサービスをLINEの画面内で使えるようにしたものだ。
ただしこれまでは、自分で画面をタップして操作する必要があった。
Agent iが変えたのは、その「操作」という部分だ。
言葉で伝えるだけで、AIが代わりに動いてくれる。
「自分で操作する道具」から「AIが裏で動かす基盤」へ——この転換が、2026年夏に法人向けとして本格始動する。
LINE内だけで予約まで終わる
提案から決済まで画面を離れない
LINEヤフーが公開したデモ映像では、その流れが具体的に示されている。
「明日19時に3人で予約したい」とLINEに送る。それだけだ。
AIが動き出し、空席のある店を探し、メニューを確認し、予約を確定する。
ユーザーは画面を切り替えない。LINEの中で、全部終わる。
このAIには「記憶」もある。
前回和食を選んでいれば、次は和食系の店を優先して提案する——そういう機能がすでに動いている。
使うたびに、自分の好みに合った提案に近づいていく。
LINEミニアプリの月間利用者は2,900万人。この人たちのLINE画面が対象になる。
スマホをかざせば店頭でも起動
画面の外にも入り口がある。
LINEヤフーが展開する「LINEタッチ」は、NFC(スマホをかざすだけで情報をやりとりできる近距離通信)を使った仕組みだ。
店頭に置かれたステッカーやパネルにスマホを当てると、その場でLINEミニアプリが立ち上がる。
2026年5月時点で導入アカウント数は2,000件、累計タッチ数は100万回を突破。利用の約6割がミニアプリへの誘導に使われている。
実店舗でかざして起動し、そのままAIに予約やオーダーを任せる——その流れが現実になろうとしている。
企業向けは2026年夏に展開
この仕組みが、2026年夏から企業に開放される。
LINEヤフーが用意するのは2つのサービスだ。
ひとつは「LINE OA AIモード」。企業や店舗のLINE公式アカウント(LINEで情報発信するための専用アカウント)に、専門知識なしでAI接客を組み込めるサービスだ。問い合わせへの自動返答、商品提案、予約受付を24時間AIが担う。
もうひとつは「Agent i Biz」で、2026年8月から提供予定だ。
集客から広告運用、レポート作成まで、AIが一括代行する法人向けサービスになる。
先行して実証実験に参加している企業はすでに20社以上。小売・飲食・自治体と、業種は幅広い。
Agent iが乗る基盤は、すでに実績を持っている。
美容室のグランドリームでは、LINEミニアプリで予約・会員管理を導入した結果、再来店率が91.9%に達し、客単価は16%増えた——LINEヤフーが公表している数字だ。
AIの接客機能が加わったとき、この土台にどんな変化が起きるか。先行実証の結果が注目される。
ただ、企業にとって避けられない問いがある。
自社で作り込んだアプリ画面をユーザーが直接見なくなる——それは、集客の主役が「自社アプリ」から「LINEのAI」に移ることを意味する。
AIへの信頼をどこまで積み上げられるか。企業とユーザー双方の判断が、この仕組みの広がりを決める。
価格帯や技術の詳細は、6月29日に開催されるLINEヤフーの技術イベント「Tech-Verse 2026」で明らかになる見込みだ。

